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開いたスペースとオーナー
本来、マンションの敷地内はそこに暮らす住民のためのスペース。しかし、茅ヶ崎市矢畑の大型分譲マンション「ライオンズ茅ヶ崎 ザ・アイランズ」では、敷地の一部を定期的に地域へ開放し、近隣住民との交流をはかっている。毎月1回、第4日曜日に開かれる名物の朝市「アイランズマルシェ」ではエントランス前のテントで、出店者たちが新鮮な野菜、総菜やお弁当、焼きいもなどを販売。広場には数台のキッチンカーも並ぶ。インドカレーやソーセージ、おにぎり、もつ焼きなど、多彩なラインナップだ。
「朝市といいつつ、午前11時からスタートして14時くらいまでのんびりとやっています。毎回100人、多いときで150人くらいが足を運んでくれますね」
そう話すのは、アイランズ・イベント実行委員会の林さんと鈴木さん。マンション住民で組織されるイベント実行委員会のメンバーで、マルシェを仕切る責任者だ。2年目から運営にかかわり、ゆっくり着実に、人が集まるイベントへと育ててきた。
このように、マンションの共用部を住民だけでなく、地域の人々にも開放するケースはそう多くない。どんな意図があるのだろうか?
「マルシェはもともと、マンション販売時の付帯サービスのひとつでした。ここは1街区・2街区合わせて800戸以上の規模なのですが、これだけ大きいものが建つとなると、少なからず近隣住民の方とのトラブルが起こる可能性もあります。そこで、近隣の方々との交流の場をもとうというのがスタートです。そのため、最初の2年間は管理会社が契約するイベント会社が表に立って出店するお店選びや契約などを担ってくれていたので、私たち住民はせいぜいテントの設営を手伝うくらい。でも、管理会社のサポート期間が終了し、(2013年に)完全に住民主導で運営するようになってからは、お店の選定から自身で始めなくてはいけないので一気にやることが増えて……、まあ、正直言って毎月開催するのは楽ではないですね(笑)」
といいつつも、その表情には充実感がみなぎっている。
「どんなに大変でも、住民の方やご近所のみなさんの楽しそうな顔を見ると報われる。それにお客さんだけでなく、出店者の方々からも毎月ここに来るのを楽しみにしているという声をいただきますし、いろんな人が支え合って成り立っている実感があります。毎回やってよかったと思えますね」
現在、マルシェ運営の主要メンバーは2名。仕事や生活の傍ら、店の選定から出店依頼・交渉までを一手に担う。スタート時の5店舗から20店舗と、およそ4倍に増えた参加店舗は全て林さんが開拓したものだ。
「とにかく足を使って動きましたね。地元でおいしいと評判のお店に通い、仲良くなってから参加をお願いしたり、出店者の方におすすめのお店を紹介していただいたり、ほかのマルシェに足を運んでいいお店がないかチェックしたり。必ず自分で食べて味を確かめ、お店の人とお話をして、私がぜひ来てほしいと思った方に交渉するようにしています」
いくらイベント実行委員とはいえ、イチ住民がそこまで労力をかけ、主体的にマンションの行事を盛り上げようと奮闘しているケースは珍しい。もちろん、林さんに報酬は発生していない。それどころか、食べ歩きにかかる費用はすべて自腹だという。
「本音を言えば、リサーチ費用くらいは管理組合から出してもらえると有難いですけどね(笑)。でも、マルシェをやっていなかったら絶対に出会えなかった人たちとつながることができたり、知らなかった世界をのぞけるのは楽しいですし、お金に変えられない価値があると思っています」
現在、マルシェを訪れる人はマンション住民が7割、残りの3割がマンション以外の近隣住民。地域交流という一定の目的は果たせているが、今後はさらにマンションの外から参加者を呼び込みたいという。
「アイランズマルシェのFacebookページをつくったり、地元のタウン誌に掲載してもらったりと、少しずつ認知していただけるようにはなりましたが、まだまだ足りないと思っています。せっかく地域とつながることができる場所なので、マンション外部の方にもっとPRしていきたいです。周囲にあるマンションも巻き込んで、もっと大きなコミュニティに広げていきたいですね」
きっかけこそ管理会社主導だったものの、現在のマルシェの盛況ぶりは林さんや鈴木さんをはじめとする住民たちの努力のたまもの。既存の住宅街に新しく建つマンションは地域から孤立しがちだが、ここではまるで古くからのご近所同士のように新旧の住民が触れ合っていた。マルシェ隊の奮闘は、さらに強く大きな地域の輪を広げていきそうだ。
林さんが出店を熱望し、直談判で口説き落とした「シーフランク」。イカやエビなど、海の幸を使った珍しいフランクフルトに住民も興味津々
地元・茅ヶ崎の「ozu cafe」は特製サンドやケーキを販売。マルシェでお店を知り、店舗に足を運んでくれるお客さんもいるそう
広場にはテーブルとイスも置かれ、キッチンカーの料理をその場で食べられる。親子や近所の人との触れ合いの場にもなっている
この日は冬場の開催ということもあり、あったかい豚汁に行列ができていた。暑い時期にはアイスを販売するなど、季節に合わせた店選びが行われている
空いてるスペース
開いているスペースの面積 | 約402.23m2 |
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開いているスペースの% | 約1.6% |
住所 | 神奈川県茅ヶ崎市 |
建物形態 | マンション |
取材・文/榎並紀行(やじろべえ) 撮影/飯田照明 間取りイラスト/tokico
情報掲載日/2016年4月28日
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