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開いたスペースとオーナー
世田谷区桜丘の住宅街にある一軒家。平日午後のリビングに笑い声が響く。週1回、岩瀬はるみさんが自宅で開くコミュニティカフェ「きままなスイーツカフェ」には毎回10人以上のお客さんが集まる。目立つ看板を掲げているわけではないが、岩瀬さんの明るいキャラクターとおいしい手づくりケーキに引かれ、10年以上通う常連客も少なくない。
「もともと20年以上前から自宅でケーキ教室をやっていて、その流れでコミュニティカフェを開きました。教室のころから通ってくださる人もいますし、若いママやお年寄りなど地域のお客さんも増えましたね。さまざまな年代の方がいらっしゃるので、子育ての先輩にアドバイスをもらったり、おしゃべりをすることで心が軽くなったり。普通の家なので自宅のようにくつろげて、初対面でも和やかに声を掛け合うことができるのかもしれません」(岩瀬さん)
2013年9月からは、コミュニティカフェとは別に新たな試みをスタート。自宅で家族を介護している人たちが集まり、当事者ならではの悩みを語り合う「ケアラーズカフェKIMAMA(きまま)」を月1回、同じくリビングで開いている。こちらは、世田谷区の「地域共生のいえ」として認定もされている。
「長く通ってくれるお客さんも自分自身も、時間とともに家族構成や状況が変わり、介護に携わる人も増えてきました。そこで、同じ立場から理解し合える場所が必要だと思ったんです。在宅介護をしている人の大半は初心者。自分のやり方が正しいかどうか、不安を抱えている人も大勢いらっしゃいます。このケアラーズカフェには家族を看取った介護経験者もサポート役として参加してくださっているため、当事者の目線で介護をする人の心のケアにあたることができます。そのサポート役の方も、もともとはコミュニティカフェのお客さんだった人たちです」
介護の話はデリケートで、人にはなかなか打ち明けづらい悩みも多い。コミュニティカフェとケアラーズカフェの開催日を明確に分けているのも、そうした配慮からだ。ケアラーズカフェになら、認知症の親も気兼ねなく連れてくることができる。「家では無反応な母親がここへ来ると笑顔になる」。そんな感想を寄せる参加者もいるという。
「自分たちもいつか介護を受ける立場になります。そうなったとき、やはりこういう場所があると心強いと思うんです。現在、ケアラーズカフェはここ以外に全国で20カ所くらいあるようですが、もっともっと増やしていかなければいけませんね」と岩瀬さん。
コミュニティカフェとケアラーズカフェ、性格の異なる2つのスペースを笑顔で切り盛りする岩瀬さん。その前向きなパワーが生み出すそれぞれのコミュニティは、地域の人々にとって欠かせないものとなっていた。超高齢社会に突入した日本社会においては、行政だけでなくこうした民間レベルの取り組みがますます重要になってくるのかもしれない。
一見ふつうの外観だが、よく見ると「カフェKIMAMA」の小さな看板が
ロゴやイラストは夫がデザイン。こうした活動を続けられるのも、家族の理解と協力があってこそ
元気で気配り上手な岩瀬さん。お客さん全員に目を配る気遣いも心地よく、その人柄に引かれて通う常連も多いようだ
ママに連れられて小さな子どももやってくる。多世代が交流するコミュニティとしての要素も強い
空いてるスペース
施主名 | 岩瀬博司さん |
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構想期間 | 10年 |
開いているスペースの面積 | 約25m2 |
開いているスペースの% | 約25% |
住所 | 東京都世田谷区 |
建物形態 | 一軒家 |
取材・文/榎並紀行<やじろべえ> 撮影/片山貴博 間取りイラスト/tokico
情報掲載日/2015年4月1日
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