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開いたスペースとオーナー
二子玉川の住宅街に建つ古い日本家屋。二間の仕切りを抜いた大きな居間からは、子どもたちの元気な声が聞こえてくる。ここは家主の飯岡三和子さんが地域に開いた、私設コミュニティ。昨夏より毎月第二・第四日曜日に「いいおかさんちであそぼ」と題して自宅の一部を開放。誰もが自由に敷居をまたぎ、思い思いに過ごせるスペースを提供している。この日も数組の親子を中心とした多世代が、ひとつの居間を共有していた。良い意味で遠慮のない雰囲気。まるで長年同じ屋根の下で暮らす大家族のようだ。
「ここは60年以上前に祖父が建てた家なのですが、私が幼いころから祖父が自宅に仲間を集めて俳句会をやっていたのを覚えています。昔から人が集まる家だったから、自宅を開放することに抵抗はなかったですね」(飯岡さん)
飯岡さんは現在70代。じつは長く保育園の園長として務め、数十年にわたりさまざまな子どもたちと向き合ってきた育児のプロでもある。子育ての悩みを抱えるママたちにとっては、頼れるグランドマザーだ。周囲のママ友にはなかなか打ち明けられない本音を吐き出し、何気ない一言に背中を押される。育児で張りつめた心の糸をほぐす、こういう場所はありそうでない。
「子育て先進国といわれる北欧やカナダには、地域ぐるみで育児を支援する仕組みが整っています。十数年前にカナダの子育て支援の取り組みを見学するツアーに参加させていただく機会があったのですが、そこで自宅を使って世代間で交流できる場所をつくる活動があることを知りました。当時はまだ保育園の園長をしていましたが、一生そこで働けるわけじゃない。仕事を離れたら私もこんなスペースを持ちたいと思ったのが、自宅を開くことになったきっかけですね」(飯岡さん)
なお、特別なイベントなどを除き、会費は徴収していない。地域のコミュニティ支援活動として区の助成金を得てはいるが、基本的にはボランティアだ。運営に当たっては、飯岡さんの思いに共感する有志のサポートも大きい。
ウェブサイトで活動状況やイベント案内を発信するなど、広報的な立場で支援するデザイナーの磯村歩さんは「自分自身も1歳半の娘がいるのでよくここに連れてきます。一人っ子なので普段は年上のお兄ちゃんやお姉ちゃんと触れ合う機会がなかなかないのですが、ここに来れば小学生くらいの子どももたくさんいるので、一緒に遊んでもらえる。子育て世帯にとっては、本当に貴重な場所だと思います。こんな場所がもっと増えてほしいですね」と、その意義を語る。飯岡さんを含めたさまざまな人たちの思いが、この場所を支えているようだ。
今後は親子だけでなく地域の高齢者も積極的に招き、さらに幅広い世代間の交流を目指していくという。子どもは知恵や技術、昔の遊びを年長者から学び、年長者は子どもから元気をもらう。核家族化した社会のなかで温かいつながりを生む"いいおかさんち"は、地域みんなの実家のような場所なのかもしれない。
祖父と孫ほど年の離れた2人が粘土細工で遊ぶ。今後はこうした世代間の交流を活発化させるべく、地域の高齢者にも声をかけているという
ピアノも子どもにとってはかっこうのおもちゃ。基本的に、この家のものはなんでも使ってOK
オーナーが自らの家を地域交流に役立てる「地域共生のいえ」に参画
常にやさしい笑みを絶やさない飯岡さん。子どもたちのパワーが元気の源だ
空いてるスペース
施主名 | 飯岡三和子 |
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構想期間 | 10年 |
開いているスペースの面積 | 約100m2+庭 |
開いているスペースの% | 約75% |
住所 | 東京都世田谷区 |
建物形態 | 一軒家 |
取材・文/榎並紀行<やじろべえ> 撮影/飯田照明 間取図イラスト/tokico
取材協力/やなぎ教育グループ http://www.yanagilearning.com/
ユルツナ http://www.yurutsuna.jp/real_report/pg403.html
情報掲載日/2014年9月3日
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