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開いたスペースとオーナー
京都・三条京阪駅から徒歩5分。町屋が点在する住宅地の一角に、築30年の長屋を利用したアカデミックスペース「学森舎」はある。ふだんは主宰である植田元気氏の自宅。その1階部分を不定期で開放し、さまざまな学問に関連したイベントを行っている。いわば、自宅を使った私設の学び舎だ。
「イベントは大学教授やその道の専門家といった外部講師を招いてのトークセッションが中心です。取り扱う『講義』の内容は、自然科学、人文科学、社会科学、芸術学までさまざま。変わったところでは仏教や妖怪にまつわるものもありました。『学問』ってすごく間口が広くて、○○学ってつければなんでもできてしまうんですよね」(植田氏)
2011年のオープンから3年間で30回以上のイベントを実施。参加人数はなんと延べ1500人以上を数える。個人が運営するスペースとしては驚異的な活況ぶりである。
「このあたりは学生街なので、20代前半の大学生の参加者が多いですね。一度参加した子が次は友達を連れて来てくれたりするので、毎回新たな出会いがあります。今はリピーターの人と新規の人が半々くらい。イベントの前後には食事会や飲み会を行うなど、初対面の人同士が打ちとけやすい雰囲気づくりも心がけています。最近では飲み会目当てにやってきて、ついでにイベントを聞いていくなんて人も増えてきましたね。近所のおっちゃんが一升瓶片手にひょっこりやってくることもありますよ(笑)」
学びの場であると同時に、人と人をつなぎ新たな交流を生むコミュニティスペースとしての役割ももつ学森舎。それは、植田さん自身の理想を具現化したものでもある。
「大学や職場など、所属する団体内での限定された人間関係に閉塞感を感じている人は多いと思うんです。僕自身もそのひとりで、学生時代から新たな出会いを求めてコミュニティカフェに出かけたりしていました。大学院卒業後しばらくは大阪市で公務員として働いていたのですが、そこで偶然にも地域間の交流をお手伝いする仕事に関わる機会があり、ますますコミュニティづくりというものに興味を抱くようになったんです。学森舎の運営に当たっては、そのときの経験が糧になっていると思います」
ちなみに、イベントによる収益は一切ない。基本は講師への謝礼や食事会の費用を賄うためのカンパのみで、その他の入場料などは徴収していない。人が大勢集まるようになっても、もうけに走らないのは、この場所を開くことに対し、お金には変えられない価値や喜びを感じているからだ。
「人との出会いもそうですし、僕自身がさまざまな分野の知識や気づきを得られることも財産になる。それに、学森舎の活動に興味をもっていただいた方からコミュニティデザインにまつわるお仕事や講演の依頼をいただくこともありますし、この場所を収益化するのではなく、そんなふうに間接的に仕事を生み出してくれる場であればいいかなと思っています」
植田さんにとって家を開くことは、あくまで暮らしを楽しむための手段。さまざまな付加価値は、結果としてついてきたものに過ぎない。どこか肩の力の抜けたそんなスタンスがあればこそ、参加者にとっても気楽で居心地の良い、絶妙な空気感が生まれるのかもしれない。
襖の奥は基本的にプライベート空間だが、参加人数によってはここも開放。飲み会後にそのまま泊まっていく人もいるとか
隠れ家のような雰囲気の屋根裏部屋もある。押入れの仕切りを利用してバーカウンター風に
一部を知人に貸し出している2階の住居スペース。完全プライベート空間で、イベント時も原則立ち入り禁止
イベントは週末を中心に開催。玄関前の看板を見てふらっと立ち寄る人も多い
空いてるスペース
施主名 | 植田元気 |
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構想期間 | 1年 |
開いているスペースの面積 | 約50m2 |
開いているスペースの% | 約40% |
住所 | 京都府京都市 |
建物形態 | 一軒家 |
取材・文/榎並紀行<やじろべえ> 撮影/香西ジュン 間取図イラスト/tokico
情報掲載日/2014年6月11日
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