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開いたスペースとオーナー
大阪市東成区でデザイン事務所兼サロンスペース「シカトキノコ」を運営するアートディレクターの藤田ツキトさん。2010年に購入した一軒家の1階部分を開放し、交流の機会を設けている。
「普段ここは自分と友人のデザイナーが仕事場として使っているんですが、たまにオープンオフィスとして開放したり、パーティーを開いたりしています。オープンの日は、基本的にいつでも誰でも入ってきてくださいというスタンスです。冷蔵庫にお酒なんかも用意しているので、昼間から飲みに来る人なんかもいます」(藤田さん)
現在はシカトキノコを拠点にフリーランスとして働く藤田さんだが、ここに至るまでにはさまざまな紆余曲折があった。大学卒業後、グラフィックデザインの制作会社に2年間勤務し、いったん独立。仕事は順調だったが、いつしかこんな疑問を抱くようになる。
「デザインの仕事といっても制作会社や代理店が間に入る下請け的な制作が多く、クライアントと直接やりとりできる機会が少なかったんです。発注者の顔が見えないので、誰に向けてデザインをしているのか分からなくなり、仕事自体にだんだん疑問を感じるようになってしまいました」
その後、いったんデザインの仕事とは距離を置いた藤田さん。ほどなくして、インスタントカメラ片手に街の風景などを撮影する「インスタントカメラマン」としてのアート活動をスタートさせる。やがて撮りためた写真を展覧会で発表し、その縁でギャラリーの運営にも従事。そこに訪れる人々と豊かな交流を重ねていった。その経験が、現在のシカトキノコのスタイルにつながっていく。
「ギャラリーは2年間ほどやっていました。楽しかったしいろんな人とつながることができたんですけど、結婚もしていたので家族で生活していくには収入的に厳しかった。でも、いい流れやご縁があってシカトキノコを始めることができ、少しずつ収入も安定していきました」
自宅でデザイン業務を請け負いつつ、そこをたまに開放して交流スペースにしてしまえば一石二鳥と考えた藤田さん。友人の手を借りながらコツコツとリノベーション。周囲の人々に支えられ、もともとはガレージだった空間を事務所兼サロンスペースに生まれ変わらせた。
さらに、本業のほうでも前回の反省をふまえ、仕事を請ける際には「直接クライアントの顔が見えること」を重視。つまり、そのデザインを欲している本人と直接やりとりができる仕事を中心に据えることにした。現在は企業や団体相手の仕事に限らず、個人からの発注も多い。時には予算的に厳しい案件もあるが、そうした場合には"お金に代わる何か"で仕事を成立させる方向を模索するという。
「場合によっては金銭ではなく、デザインの対価を『物々交換』で得るのもいいと思っています。実際、そこに置いてあるキノコのランプシェードも陶芸家さんから仕事を請けたときに、デザイン代としてもらったものです。以前にマジックショーのWEBチラシを制作したときは、交換するものがなかったのでこの場所でマジックのワークショップイベントを開催してもらい、その参加料をデザイン代としていただきました」
お互いがもつスキルとスペースの有効活用により、双方が納得できる着地点を得る。家を開くメリットが、最高の形で表れた事例といえるだろう。
現在、藤田さんが手がけるのは、相手の顔が見え、体温を感じる仕事ばかり。そんな理想的な仕事のスタイルを続けていくためにも、藤田さんはこの開かれたスペースを大事にしていきたいと考えている。
自宅とは別に設けられた事務所&サロンスペース用のドア。工事は友人にお願いしたという
入口にはこれまでシカトキノコにやってきた人々の写真が。老若男女さまざまな顔が並ぶ
街のあちこちに共有本棚を設置する活動「まちライブラリー」にも参加。これも住み開きのひとつのツール
自宅仕事はどうしても孤独に陥りがちだが、藤田さんは住み開きによって見事それを解消している
空いてるスペース
施主名 | 藤田ツキト |
---|---|
構想期間 | 1年 |
開いているスペースの面積 | 約21m2 |
開いているスペースの% | 約20% |
住所 | 大阪府大阪市 |
建物形態 | 一軒家 |
取材・文/榎並紀行<やじろべえ> 撮影/香西ジュン 間取図イラスト/tokico
情報掲載日/2014年6月4日
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