不動産・住宅サイト SUUMO(スーモ)トップ > 家を開く > 実例一覧 > 本を通じ、心の交流を育む「街の図書室」
開いたスペースとオーナー
誰にでも1冊くらいは、大切な本があるのではないだろうか。幼いころに好きだった絵本、夢中になって読んだ漫画、辛いときに力をくれた小説、そんな思い入れのある一冊を見知らぬ誰かとシェアし、心の交流を育む場所がある。東京都国分寺市の「西国図書室」だ。
2年前、妻とともに国分寺に転居してきた篠原靖弘さんが、自宅の1階部分を地域に開いた「街の図書室」。もともとは洋裁店として使用されていた8畳ほどのスペースに、現在ではさまざまなジャンルの本が置かれている。
ユニークなのはその仕組みだ。公共の図書館のように一方的に貸し出すのではなく、ここでは「本の物々交換」を基本としている。つまり、本を借りる代わりに、自分が持っている本を置いていくというもの。なぜ、こうしたルールが生まれたのか?
「ただ本を貸すだけではつまらないですし、返却されない可能性もある。そこで、交換という形を考えました。自分がおもしろいと感じた本を、ほかの人にも読んでほしいと考える人はいるでしょうし、本をシェアすることでコミュニケーションも生まれるだろうと。そのうち、そのまま本を預けてくれる人も現れたのですが、そのまま置いておくだけというのももったいないので、さらにその本を誰かに『又貸し』することにしました。そんなふうに『本が旅する』ことで、さらに交流の輪が広がっていくんです」
持ち主は本を預ける際、用意されたカードにその本との「なれそめ」を書く。カードは戸籍証ならぬ「本籍証」として裏表紙に挿しこまれ、その本を開いたべつの誰かは預けた人の「思い入れ」にふれることができる。まさに、本を通じた心の交流だ。本籍証は現在600枚を超え、そのうち半数近くが旅に出ている最中だという。
こうした仕組みは、西国図書室の思いに共感した15人ほどの有志で組織される「作戦会議」で生まれたものだ。メンバーには常連の利用者などもおり、月に一度、運営についてのアイデアを話し合っている。
「平日はほかに仕事をもっていますし、夫婦ふたりだけで運営しようとすると、どこかで無理が出てきてしまいます。じつはここに来る前に住んでいたシェアハウスでも、仲間たちとコモンスペースを使ってイベントを開いたりしていたんですが、人が多く集まるようになってくると負担が増え、自分たちだけでは回せなくなってくる。そこで、ここでは誰でも気軽に関わりやすい雰囲気をつくり、時には彼らに図書室の一員として助けてもらう。そんなやり方を心がけています」
1年前からは西国分寺駅前の人気カフェ「クルミドコーヒー」内に、新たな本棚を設置。西国図書室の「分室」として、広く街の人々に利用されている。さらに、地元のイベントにも積極的に参加するなど、利用者同士のみならず、地域とのつながりも生まれつつある。
本によって紡がれ続ける新たな出会い。コミュニティの輪はさらに広がっていきそうだ。
利用者が増えてきたこともあり、今後は平日のオープンも検討しているという
入口付近に貼られたメッセージカード。貸した本、借りた本、それぞれについてのコメントが書かれている
「人の本っておもしろいですよね」。集まってくる本を読むのは、篠原さん自身の楽しみでもある
以前はシェアハウスに住んでいた篠原さん。もともと人と関わりながら暮らすのが好きなんだという
空いてるスペース
施主名 | 篠原靖弘 |
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構想期間 | 1年 |
開いているスペースの面積 | 約15m2 |
開いているスペースの% | 約30% |
住所 | 東京都国分寺市 |
建物形態 | 一軒家 |
取材・文/榎並紀行<やじろべえ> 撮影/藤本和成 間取図イラスト/tokico
情報掲載日/2014年2月28日
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