子どもや孫に頼らず気ままに楽しむカフェ
開いたスペースとオーナー
広島で時を重ねてきた古い団地の一角に、ギャラリー&カフェ「ラングザーム」はある。築約40年の住まいは、15年ほど前に増改築。以来少しずつ、壁を塗ったり、テーブルなどの家具を自作したりと、自分たちの好みで手を加え、大切に暮らしてきた。
陶芸家として展示会なども開いていた妻は、子どもたちが独立し、空き部屋が増えてくると、「どうせなら家でやろうか?」と考えるようになり、10年ほど前から月1回ペースで自宅での展示会をスタート。当時から、展示会のときにはコーヒーを出して和やかな時間を過ごしていたが、週3日オープンの、現在のカフェスタイルになったのは、夫が定年を迎えた3年ほど前からだそう。
「生活感がないからか、『どこで生活してるんですか?』とよく聞かれるんです」とYさん。カフェとして家を開くようになってから、家をキレイに保つことがすっかり生活の一部になったという。「今では店を開けない日も、朝起きたらまず掃除。これがいいリズムになっているみたいです」と穏やかに笑う。
「『ラングザーム』って、ドイツ語で『のんびり』って意味なんです」。生活の一部のように店を開け、ゲストが来ればコーヒーを出し、おしゃべりを楽しむ。顔なじみが増えてくると、「今日開いてる?」と気軽にやってきてくれる。「そういうゆるいつながりが、本当に心地よいですね」
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- カフェのおかげで
たくさんの人とのつながりを楽しめる
- 「孫が来るのだけを楽しみにするのではなく、自分たち自身でもっと楽しく生きないと」と、自然体で、肩肘張らない雰囲気がステキなYさん夫妻。カフェを縁に知り合った、たくさんの人とのつながりが、何ものにも代えがたい宝物だという。
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- 緑が美しく、打ち水が心地よい
エントランスでお出迎え
- 駐車場から玄関に向かうエントランスは、ダークカラーの敷石や建具、白い砂利のコントラストが美しく、打ち水で輝く鮮やかな緑が映える。季節ごとに表情を変える植物たちは、室内に生けたり、カフェプレートに乗せたりと大活躍。
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- ゆったり深く腰かけて
時間を忘れてくつろげるソファ
- 訪れる人は、広島市内からを中心に、噂を聞いた海外からの旅行者まで多岐にわたる。ソファスペースでは、とりとめのないおしゃべりに花が咲くことも。このほか、テラス席、和室、テーブル席もあるので、「お好きなところへどうぞ」。
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- 自然の風が吹き抜け
床座もゴロ寝も心地いい和室
- 約10畳の琉球畳のスペースのまわりを、ぐるっと板の間が囲むつくり。両側に大きな窓があるので、吹き抜ける風が心地よい。畳に座って、庭の植栽や陶器に生けられた緑を眺めているだけで、心も体もリラックスできる。
かかった費用は?
- 15、6年前の増改築以降、内装は夫婦二人で少しずつ手を加えてきたというYさん。「必要だったのは、カフェ営業のための厨房の整備費や申請に関わる料金くらい」。テーブルなども手づくりのため、ほかは材料費のみだという。
アドバイスとこれからの展望
- 「何が目的かを見失わないことですね。例えば私の場合は、『カフェで儲けたい』というより、『みんなが気軽に立ち寄れる場所を提供したい』という気持ちのほうが強かったので、実はあまり採算は考えていません。はじめはコーヒーもお金はいただいてなかったのですが、来る人が遠慮するので500円のワンコイン制にしました。もちろん、店を開ければその分光熱費はかかりますが、『ま、いっか』とゆったり構えて、いろんな人とのつながりを大切にしています。お客様が来ないときは和室にゴロンと寝転んでお昼寝。そんなふうにマイペースにできるのも自宅ならではですよね。これからも頑張りすぎない今のペースで、いろんな人とつながっていきたいと思います」
間取りとDATA
空いてるスペース
施主名 |
Yさん |
家族構成 |
施主夫婦 |
開いているスペースの面積 |
約80m² |
開いているスペースの% |
約50% |
住所 |
広島市佐伯区五月ヶ丘1-16-20 |
TEL |
082-941-3320 |
ホームページ |
http://www.geocities.jp/ymdsmr/ |
営業時間 |
火・木・土のみ 10:00~16:00 (※お休みとなる場合もあります) |
建物形態 |
一戸建て |
取材・文/西村祥子 撮影/古石真由弥<スタジオケンゾー> 間取図イラスト/tokico
情報掲載日/2013年6月19日
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