古い店舗を改修した下町の手づくり図書館
開いたスペースとオーナー
東京の下町・墨田区向島。吉行淳之介著『原色の街』で「迷路の街」と形容された鳩の街通り商店街の終点付近に、古い店舗を改修した「こすみ図書」がある。平日は会社員をしているKさんが、休日にだけオープンする民営の小さな図書館だ。
「大学でアートプロジェクトの勉強をしていたこともあって、就職してから自分を表現するスペースをもちたいと考えるようになりました。で、もともと本が好きなので、図書館がいいなと。ただ、自宅と別にギャラリーを借りるのは予算的に厳しい。そこで、自宅の一部を改造してスペースにできる賃貸物件があればいいなと思っていました」
向島ではこうした古い店舗や家屋をリノベーションして住む人が増えているという。かねてからオープンな交流スペースを持ちたいと考えていたKさんも、向島の街をぶらぶら歩きながら空き家を探し、商店街の会長を介して物件の所有者に直談判したという。
「もともとここはお茶屋さんだったんですが、閉店してからは大家さんが物置として使っていたみたいです。かなり老朽化しているので人に貸す気はなかったみたいで。ホラ、そこも雨漏りしてるでしょ(笑)。だからこそ安く借りられたし、改造OKの許可もいただけたんだと思います」
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- 広々とした土間で
さまざまなイベントを開催
- 図書館の手前はイベントスペース。土間にテーブル・椅子を置いただけの広々とした空間で、サロン的な活動の場として活用している。
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- 手づくりの改修で
お茶屋さんが図書館に
- もともとはお茶屋さんだった1階部分。店舗の設備を撤去し、新たに本棚を設置。壁の色も自ら塗った。全てボランティアスタッフの力を借りたため、工事費用はゼロ。
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- 小説、雑誌、漫画まで
さまざまな本が集まる
- 本棚には自分の好きな本、仲間や近所から持ち寄られた本のほか、温かみのある手づくりの紙芝居も。鳩の街通り商店街で起こるさまざまな物語をまとめた短編集「墨東文庫」も配布している。
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- お茶屋の看板と
かわいいイラストマップが目印
- 「お茶 泉園」の看板がそのまま残る外観。窓ガラスには周辺の店舗の位置を記した、かわいいイラストマップが描かれている。
かかった費用は?
- 住居部分も含めると総改修費用は約50万円。そのうち、図書館部分の改修費用は約15万円だ。主にペンキ代や棚板など材料費で、改修はほぼボランティアの手に委ねた。
アドバイスとこれからの展望
- 「私の場合は色んな人に手伝ってもらったおかげでかなり予算を抑えることができました。改修自体をワークショップという形にして、みんなで楽しくペンキ塗りをしたり。イベントみたいにして楽しめるようにすれば、快く手伝ってもらえると思うのでオススメです。それでご近所の方々とつながりもできますしね。
ここでイベントをやっていると近所のおばあちゃんがのぞきにきたり、近所に新しく建ったマンションのお母さんが興味を示してくれたりもします。そんなふうに新旧の住人同士がつながれるスペースにもなればいいかなと思っています。私自身もいろんな人と知り合うことができますしね。こういうスペースが自宅にあると生活が本当に楽しく なりますよ」
間取りとDATA
空いてるスペース
施主名 |
K.Jさん |
家族構成 |
一人暮らし |
構想期間 |
2~3カ月 |
開いているスペースの面積 |
約20m² |
開いているスペースの% |
約40% |
住所 |
東京都墨田区向島5-48-4 |
ホームページ |
http://kosumitosyo.blogspot.jp/ |
アクセス |
東武伊勢崎線・亀戸線曳舟駅から徒歩15分 |
建物形態 |
一戸建て |
取材・文/榎並紀行<やじろべえ> 撮影/藤本和成 間取図イラスト/tokico
情報掲載日/2013年1月30日
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